ジェームズの独り言

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zoom RSS 魔女と結婚したヴァンパイア

<<   作成日時 : 2006/05/26 22:35   >>

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  2003年、私にとっては非常に有難いルーマニアの変化があった。ビザなし、事前の許可証なしで、好きなだけ滞在してよくなったのだ。どういう風の吹き回しかは知らないが、なんとも嬉しい驚きであった。
  まず大阪からエールフランスでパリへ向かう。前回は航空会社の手違いのため、追加料金なしでファーストクラスに乗せてもらったのだが、今回はいつものエコノミークラス・・・。手荷物検査がやたらと厳しくなっている、靴の中までX-線で調べられた。
  大阪からパリまでの飛行機は大きくて立派なのだが、パリからルーマニアへ向かう飛行機は小さくてちょっとオンボロだ。けれども、なぜかこのオンボロさかげんがみょうに懐かしく、ああ、帰ってきたんだなあ・・・と思わせる。そして、機内を飛び交う(ちょっと品の無い)ルーマニア語も少し分かるようになってきた。
  もうすぐ娘に会える、待ちに待ったのだ、楽しみと同時にドキドキする・・・。何よりもまず父親と認識してくれるだろうか。最初の一言は何と言えばいいのか。などとあれこれ思案しているうちに、もうブカレストだ・・・・。現地時間で夜の11時頃、予定時間を少し過ぎて着陸した。相変わらず夜風が冷たくて気持ちいい。
  滞在許可証もなにもなしでパスポートコントロールへ・・・・今までがあまりにも厳しかったので少しドキドキしながらパスポートを出す。が、何の審査もなくほとんど素通り状態で通過した。さらには、手荷物検査もなく、びっくりするほど簡単に入国してしまった。
  そして、出口に行くと乳母車に娘を乗せた妻が待っていた。私が声をかける前に娘が
「タタ(おとうちゃん)・・・」と言って、少し恥ずかしそうに笑った。おそらく母親からさんざん訓練されていたのだろうが、会った瞬間から父親だと認識されて嬉しいやら、驚くやら・・・。
  
  今回はバカウ村へは向かわない。そのままホテルへ直行すると言う。そうか・・・もう家は無いんだったな、と少し寂しく思う。
  お父さんの体調は、今それほど悪くは無いのだが、ペースメーカー等に問題が起きたときにはルーマニアでは早急な対応ができなこともある、ということでまだイタリアの病院に入院している。もうルーマニアへは帰れないかもしれないらしく、兄弟たちもイタリアで仕事を始めたらしい、生活費や入院費のために・・・・。
  思えば、インドにもそのルーツを持ち、(母親、すなわち妻の祖母はインド人で、なかなか有名な通訳だったらしい)、トルコ共和国で生まれ、(お父さんのお父さん、すなわち妻の祖父はトルコ人であり、お父さんの元来の国籍はトルコである)、旅の途中でジプシーの少女(妻のお母さん)と出会い、結婚してルーマニアに移り住む・・・・という旅から旅の人生を送った、誇り高きジプシーなのだ。
  なぜかふと、あるジプシーのお葬式の歌を思い出した。
  
  旅を続けるのがジプシーの生き方だ
  我々は好きで旅をしている
  今日から私は寒さも苦しみも空腹もない世界で大好きな旅が続けられるのだ
  さあ踊ろう、さあ歌おう、
  旅立ちだ、明るく私を送っておくれ
  また会う日まで、あんたたちもいい旅を!  それがジプシーだ!!
  
  葬送曲とは思えないほど明るくダンサブルな曲なのだが、つくづくジプシーの力強さを感じる。
  まあ、とにかく今は親子3人で(従弟の運転する)車に乗っている。娘VANESSAは頭を妻のひざにのせ、足を私のひざにのせ眠っている。
  まあ、色々あったけど、今私は幸せである。

  しばらく走ってから妻は、「ホテルまではもう3時間くらいかかる」と言った。車はどんどん山奥へと入って行く。ヨーロッパに、いやルーマニアにこんなに高い山があったのかと思いつつ、
 「いったいどこのホテルなんだ?」と聞くと、 妻がみょうな笑いを浮かべて、 「ドラキュラ城の近くのホテルを予約した、あんた好きだって言ってたでしょ」 と言う。
  私は嬉しいやらびっくりするやらで、一瞬言葉を失った。幼い頃から大のドラキュラファンで、テレビなどでは何度かドラキュラ城を見たことはあるが、なんと、本物が見れるのか・・・。
  車はさらに山奥へ入って行く。夜風が冷たい涼しさから、はっきりとした寒さの変わった。
樹木に道が覆われて夜空が見えないほどであるが、木々の隙間から差し込む月光は異様な明るさを放っている。いつもとちがう、車はもちろん、馬車さえ一台も走っていない。少し不安になってきた頃、妻が 「着いたよ」 と言った。
  最後の森を抜けたとたん、突然、目の前に城下町が浮き上がる。満月だ、昔ドラキュラの映画で見たのと同じ、あのドでかい満月だ。城下町全体をきわめて明るく、しかし静かな光で包んでいる。もちろん街灯などなく、家々の戸口では松明が燃えていた。
  正確に言うと、いわゆる化け物のドラキュラではなく、そのモデルにされたと言われている当時のトランシルバニアの領主、ペレシュ公の城である。そしてその城と城下町がほぼそのまま残されているのである。観光のためにわざと残したわけではないようだ。建物がそのまま(あるいは多少の修繕で)まだまだ使えるのでそこに住んでいるのだそうだ。あと500年くらいは壊れないという。
  私たちは石畳の道を歩いて(車がもうそれいじょうはいれないので)ホテルへ向かう。それにしても寒い。300年以上前からあるという貴族だか華族だかのお屋敷をほぼそのまま使っているというホテルには当然エレベーターなどない。私は娘を抱え、一段がかなり高い石の階段をヒーヒー言いながら上った。するとけっこうからだが暖まった。
  午前3時頃、やっとホテルのフロントに着く。どっしりとした石造りのデスクの奥から、300年前からいるんじゃなかろうか、という衣服と面立ちのお婆さんが不機嫌このうえない表情で、部屋の鍵を持って出て来た。それは、まさに 「鍵」 であった。真鍮製で15センチくらいある大きくて重たい鍵だった。
  その鍵を手に、さらに石の階段を上がり、やっと部屋に着いた。鍵を鍵穴に突っ込み、ゆっくり回すと、ガチャリッ! という鈍く大きな音をたてて扉が開く。
  他にも宿泊客がいるらしく、時々あちこちでガチャリッ! という音がする。なかなかに不気味な音ではある。
  日本人の感覚からすれば、まずは長旅の疲れをお風呂で休めたいところであるが、300年前の建物に風呂などなかったのだ。それでも、有難いことにトイレは増設されていた。まあ、しかし増設とはいっても石の壁をぶち抜いて排水口のようなものを開けただけものであるが、当時のようにいちいち外まで用を足しに出なくてすむのは助かる。
  さて、私が驚いたのは部屋の家具類である。タンスもベッドもすべて本物のアンティークである。このベッドなどは日本でオークションにでも出せば数百万はしそうな代物だ。その上に妻がカバンやバッグを放り投げる・・・・ここでは当たり前のことのようだ。
  窓にもタンスにも鍵がついており、ガチャリッ!とけっこう大きな音をたてないと開かないので、窓を閉めたまま満月を見ていた。
  家を売る時、ドーベルマンも売り、狼は射殺された、と聞いたので満月が胸に痛かった。ヴィッツァは月が好きだったからなあ・・・・。
  本物の中世のベッドで妻と娘はぐっすりと眠っている。私はアンティークおたくでもあるので、あまりにも勿体ない気がして、ベッドでは眠れず、床にシーツを敷いて寝た。
  そして朝、 「あんた、何してるの!?!」 という妻の声で起こされた。私がわけを話すと、 「こんなバカ見たことがない!!明日からはちゃんとベッドで寝ろ!!」 とさんざん文句を言われたのだが、2年ぶりに妻からわめきちらされて、私はなぜか嬉かった。
  トランシルバニアの朝・・・・街の様子がいつもと違う。牛乳配達のおじさんの馬車の音もなく、火を熾すお母さんたちの声もない。なによりも、朝から大きな音で流れてくるジプシーの歌がない。静かな街に、ただ教会の鐘の音が鳴り始めた。
  答えはは分かっているのだが、あらためて妻に 「ここはどこだ」 と聞いてみる。妻は昨夜と同じみょうな笑いを浮かべて、「トランシルバニアだよ」と答えた。
  そうだ、とうとうトランシルバニアまで来てしまったのだ。  妻が窓を開けて山を指差すので、見てみると、なんと山頂に雪が降っている・・・・。
  2003年、8月の朝である。





















































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